リハビリテーション以外でも幅広く使われる物理療法の種類

物理療法は、たとえば電気や超音波、冷水などの物理的なエネルギーを使って、疾病などを治療する方法です。物理療法は、痛みを和らげることや、血行の改善、リハビリテーションなど、医療の場面で幅広く使用されています。この記事では、そんな物理療法の種類について解説します。

物理療法について

物理療法は、物理的なエネルギーを生体に与える医療行為で、たとえば冷水や温水、電気や超音波などを使用して、疾病の治療をすることです。物理療法の歴史は古く、古代ギリシアの時代には、すでに存在していたとされています。一口に物理療法といっても、その中身はさまざまで、また幅広い分野に活用されている治療法でもあります。医療としてのリハビリテーションにおいては、中心的な役割を果たしているといってもいいでしょう。

さまざまな種類がある物理療法

物理療法は、太陽光などを利用することで、人類が古くから行ってきた治療行為です。現在では、自然のエネルギーだけでなく、さまざまなエネルギーが物理療法に使われています。

光線療法

光線療法は、専用の機械を使うことで、光線を照射して疾病等からの回復を図る物理療法です。高ビリルビン血症(黄疸)は、ビリルビンという血液中の物質が増加することにより起こりますが、この治療に光線療法が効果を発揮します。高ビリルビン血症は、ひどくなると脳に影響することもあるため、将来的に運動障害を引き起こす可能性があります。

温熱療法

温熱療法には、近年、がんに有効な治療法として注目が集まっています。温熱療法は、局所的に行う療法と、全身に行う療法とに大別されます。局所的に行われる温熱療法は、主にがん治療に使われ、がん細胞が存在する場所に直接熱を加えることで治療を行います。全身に行う療法は、人工心肺などを利用し体内に血液を戻す際に「血液を温める」などの形で用いられます。ただ、温熱療法は、それ単独で行うのではなく、他の療法、たとえば化学療法や免疫療法と併せて行うことが一般的です。

水治療法

水治療法は、水を使う物理療法です。自然に存在する物質を使うため、長い歴史を持つ医療手段です。冷たい水を使う「冷水浴」や、温かい水を使う「温水浴」も、この水治療法に含まれます。また、これらになんらかの技術を組み合わせて行う方法もあります。温泉を利用して行う治療も、この水治療法の一つ。リハビリなどにおいて、水の浮力を利用して訓練を行うことがありますが、これも水治療法の一つです。水は人体の整理に大きな影響を与えるため、治療以外にも予防目的や鎮静効果が期待され、現在では発泡浴、蒸気浴、熱気浴などの形でも使用されています。

温・鉱泉療法

温・鉱泉療法は、温泉に入る、温泉を飲む、もしくは吸入などにより疾病や傷の状態を回復し、体調を整える療法です。水を使いますので、水治療法の一部といってもいいでしょう。温泉や鉱泉を利用する物理療法は、温熱が体になんらかの作用を及ぼすことを指します。また、温泉の水圧にも物理的作用があります。温泉に入ることで空気の圧力から体が解き放たれ、内臓への負担が軽くなりますこれは一種のマッサージ効果であり、呼吸機能アップに役立ちます。

温泉を使う療法では、温泉の浮力を利用した治療も行われます。浮力のサポートにより関節や筋肉の動作の負担が軽くなります。温かい温泉なら血行促進効果が期待できますし、また、低温の温泉を利用すれば心を落ち着ける効果が期待できます。

電気療法

電気療法は、その名のとおり、電気を使う治療法です。電気療法は、「神経疾患」「疼痛」の治療に用いられます。赤外線や紫外線などを使用する光線療法も電気療法に含まれます。

神経疾患の治療には、「電気ショック」や「電気浴」などが含まれます。

・電気ショック療法

電気ショック療法は、かつては統合失調症やうつ病の治療によく用いられていた物理療法です。体に電流を流すことで患者の意識は飛び、痙攣の後に睡眠に至ります。

・電気浴

水治療法の一つで、血管運動障害などの症状を持つ患者に効果があるとされています。

疼痛の治療には、「極超短波療法」や「ジアテルミー療法」が使用されます。

・極超短波療法(マイクロ波療法)

極超短波療法は、マイクロ波とも呼ばれる、ひじょうに波長の短い電波を使って行う治療法です。マイクロ波は、私たちの生活のさまざまな場面で利用されていて、衛星放送や電子レンジなどがその代表格です。極超短波療法の仕組みは、電子レンジの仕組みに似ていて、がんの治療や止血のためによく使われています。マイクロ波は、金属が付いていない限り、服の上からでも照射することが可能だという利点があります。また、体内の深いところまで届くため、患部に直接作用し、血行の改善、発痛物質の生成を抑制すると共に取り除き、さらに筋肉の緊張緩和、などに効果を発揮します。

・ジアテルミー療法

ジアテルミー療法は、毎秒100万から数百万ヘルツという高周波電流を体に通すことで生まれる抵抗熱を治療に使う療法です。筋肉痛や筋肉リウマチ、神経痛、座骨神経痛、胃けいれんなどの症状に効果があると言われています。

気候療法

気候は人間の心に影響を与えます。いい天気であれば心躍り、ジメジメとした雨の日は心も湿りがち、といった「気分」は誰しもが経験し、知っていることです。気候療法は、たとえば海辺の観光地と高原にある観光地では雰囲気に違いがあるように、それぞれの街で行われる治療に「気候」が影響する、という考え方になります。気候といえば、四季がある日本の場合、四季を代表する病気や症状があります。春の花粉症、夏の食中毒…気候は病気とも密接な関係があります。

「保養地」という言葉がありますが、この気候療法は保養地で行われます。同じ保養地でも、先に触れたとおり、雰囲気に違いがありますが、その違いが「保護性気候」と「刺激性気候」です。保護性気候はストレス解消、病後の回復、などを目的とした療養に適した気候です。もう一つの刺激性気候は、温度や湿度が変わりやすく、風や紫外線の影響を受けやすい保養地の気候を指します。刺激性気候の保養地では、生体防御機能の鍛錬などを目的とする方の療養に適しています。

運動療法

運動療法は、運動することで疾患や障害を予防する、もしくはそれらからの回復のために行う物理療法です。糖尿病、脂質異常症、高血圧など、生活習慣病の予防、改善に効果があるとされています。

・有酸素運動

有酸素運動は、糖質や脂質と同時に酸素を使うエクササイズのこと。体を追い込むようなハードな運動ではなく、心地よい、多少息が弾む程度の負荷が理想的な運動です。有酸素運動を行うことで、高齢者に多い「骨粗鬆症」の予防や心肺機能強化につなげることが可能です。ウォーキングやジョギング、サイクリングや水泳などの運動が有酸素運動に当たります。

・無酸素運動

酸素無しで、強い負荷をかけて筋肉を動かす運動のことで、スクワットやダンベルトレーニングなど、後ほどご説明するレジスタンス運動が、この無酸素運動に当たります。

・ストレッチング

ストレッチングは、運動療法の一つで、筋肉を和らげ、怪我の予防につながります。そのためストレッチングは、多くの場合、準備体操やクールダウンに利用されています。

・筋トレ

筋トレ(筋力トレーニング)は、筋力を増強するための運動。筋肉に負荷を繰り返しかけて行います。関節を動かす筋トレはレジスタンス運動とも呼ばれるもので、負荷はさまざまです。